ブドウが偶発的に発酵したことによって始まったワインの歴史。
ヨーロッパでは神聖な飲み物としてさまざまな神話が生まれた。
19世紀、フィロキセラによって壊滅的な打撃を受けたブドウ畑は復活を遂げた。
だが今、流行を求めるあまり、ワイン造りのスタイルが画一化されつつある。 |
ワインの歴史といってもその始まりはブドウの果汁が偶発的に発酵したことにあり、時代や場所を正確に言
い当てることは不可能である。
しかし、ブドウの原産地が古代オリエント地域と言われていることから、ワインの故郷もおそらくこの地域の
どこかと考えられている。
ワインに関する成文化された文献で最古の物は、古代バビロニアのギルガメッシュ叙事詩で、紀元前500
0年から4000年頃の出来事を記述したものである。このことから、ワインは人類が口にした初めての酒と
いえよう。
また、これより後の紀元前1800年から1700年頃に制定された、バビロン第1王朝のハムラビ法典では、
ワインの売買に関する法律が規定されていることから、当時、既にワイン造りとその消費が日常的に行わ
れていたようである。
メソポタミアに始まったワイン造りの文化はクレタ島を始めとするエーゲ海の島々を経てギリシャに伝わり、
さらにフェニキア人の手によって地中海沿岸の諸国へと広まった。
ギリシャ神話でも酒神バッカス神話となって登場し、神から与えられた神聖な飲み物として扱われるように
なる。ローマに伝わったのはのは紀元前58年から51年にガリアを征服し、現在のフランスにブドウ栽培と
ワイン醸造の文化が根付いた。
当時、アンフォーラと呼ばれる素焼きの壺で貯蔵、運搬されていたワインはガリアでビール醸造に用いられ
ていたオーク樽と結び付き、その運搬の容易さと熟成による品質向上から以後、ワインの貯蔵にはオーク
樽が欠かせなくなる。
ワイン造りは、イスラム民族のヨーロッパ侵入で一時低迷したものの、800年に西ローマ帝国皇帝に即位
したカール大帝(シャルルマーニュ)がブドウ栽培とワイン造りを奨励し、ワイン生産は再び隆盛の時を迎え
た。また、中世にはキリスト教会が大きな力をもち、修道僧たちがブドウ畑の開墾とワイン造りの発展に貢
献した。
6世紀からヨーロッパの宣教師や征服者の手によって、南北アメリカ大陸にブドウ栽培とワイン造りが伝わり
ワイン文化の範図は世界的規模に拡大するが、19世紀後半には、フィロキセラと呼ばれる害虫が世界中の
ブドウ畑に壊滅的な被害をもたらすことになる。
19世紀末にフランスのパストゥールが微生物の働きを明らかにしたため、それまでの経験主義に基づいて
行われてきたワイン造りが、科学的に進められるようになった。
そして今日、フランスやアメリカでワイン醸造に関する研究が盛んに行われるようになりワインの品質向上
と生産の安定に、醸造学の進歩に欠かせない要因となっている。
